恵比寿駅から徒歩5分ほど。打ちっぱなしコンクリートの洗練された建物の2階にある、予約制のエタニティリング専門店『エタニティリング.com 誠美堂』。
そのオーナーであり、誠美堂(SEIBIDO)の社長を務める余湖真里さんは、ダイヤモンドの輝きは女性特有の体調不良さえも救うと言います。
多様なジュエリーの中で、なぜエタニティリングにこだわるのか。
どんな想いでダイヤモンドを販売されているのか。
お話を伺いました。
ダイヤモンドは“女優ライト”、ジュエリーは“レフ板”
― 余湖さんはいつも素敵なダイヤモンドを身につけていらっしゃいますよね。それに、手がとても綺麗!!
ダイヤモンドの指輪をしていると、自然と視線がダイヤモンドに集まります。そのおかげで、手が実際よりも綺麗に見えるんですよ。
私はダイヤモンドは“女優ライト”、ジュエリーは“レフ板”だと思っています。
だから、私はお風呂に入る時でも、必ずダイヤモンドを何か1つは身につけたままにしています。何もつけていないと、つい自分のコンプレックスに目がいきがちです。でも、キラキラと輝くジュエリーを身につけていると、自然と視線がそこに集まるので、自分のテンションを落とさずにいられるんです。
ジュエリーは女性の味方ですね!
本当に輝くエタニティリングを提供したい

ー 余湖さんはどうしてエタニティリングの専門店を作ろうと思われたのですか?
大学卒業後、父が創業したSEIBIDOに入社し、バイヤーや販売業務を通じてジュエリーの世界に携わってきました。数ある美しいジュエリーの中でも、私が特に惹かれるのはエタニティリングです。これまで多くのお客さまにエタニティリングをお納めする中で、「エタニティリングは人生で一度は手にしたくなる特別な指輪だ」と実感しています
一方で、エタニティリングの事を真剣に考えて製作しているお店は、それほど多くないと感じています。だからこそ、エタニティリングに特化したお店をつくりたいと思いました。
また、エタニティリングは「永遠」という特別な意味が込められているため、結婚10周年に「変わらない愛」を伝える贈り物としても人気が高いです。私も10年目の結婚記念日に「夫からエタニティリングをプレゼントしてもらえるかも」と期待していましたが、実際にはそんなサプライズは用意されていなくて……。というのも、結婚10周年の頃って、子育てなどにもお金がかかる時期で余裕がないんですよね。これが世の現実だと思い知りました。
そんな自分の経験も相まって、手に取っていただきやすいエタニティリングのお店を作りたいと思い、エタニティリング.com を立ち上げました。
ー 「手に取りやすい」とは、具体的にどのような点を意識されているのでしょうか?
当店では価格を抑えながらも、本当に輝くエタニティリングをご提供しています。
エタニティリングは、使われているダイヤモンドが小さいので、大きな一粒ダイヤのリングよりも手頃だと思われることが多いです。ですが実際には、ブランドさんや百貨店さんの価格を見て、「婚約指輪と同じくらいするんだ……」と驚かれる方も少なくありません。さらに、0.1カラット未満のメレダイヤには鑑定書が付かないので、買う人も、売る人も、どんな石を使っているのかがわからない。実際にはあまりグレードの高くない石が使われているケースも多いです。
というのも、小さな石にカッティングを施すのはものすごく大変なんです。職人さんは技術を磨くのに時間がかかるし、熟練してくると今度は目が悪くなってくる。ダイヤモンドをカッティングできる職人さんはそれほど多くないので、メレダイヤのカットに多くの人手を割くことが難しいのが現状です。
こだわりの石選び。使うのは最上級のエクセレントカット

ー 本当に輝くエタニティリングを作るために大切なのは、やっぱり石選びなのでしょうか?
当店では、特にカットのクオリティにこだわりを持ち、メレダイヤにもエクセレントカットのダイヤモンドのみを厳選して使用しています。一方で、色味と内包物については、敢えて超トップグレードを避けて、美しく輝くものを慎重に選び抜いています。
たとえば色味は、完全無色の「D(ディーカラー)」というグレードが最も高く、徐々に黄色みが強くなっていきます。しかし、最上級の「D」を選ばずとも、プロでも容易には見分けがつかない、まさに「狙い目」のグレードがあるんです。このグレードを選ぶことで、美しさを保ちながらコストを抑えることができます。
また、内包物も少ないほどグレードが高くなります。でも、私は輝きを妨げない程度の内包物は、天然ダイヤモンドの証であり、むしろ個性だと思っています。というのも、最近では人工的に作られたラボグロウン・ダイヤモンドが普及し、内包物のない合成ダイヤモンドと一線を画す意味でも天然の内包物はあって良いと考えているからです。
カット、色味、内包物、全てを最高グレードを選ぶと、どうしても価格が高くなってしまうので、色味と内包物を慎重に見極めてコストを抑えながら、カットは最高級のものを選ぶ。そうすることで、光を全反射させ、圧倒的な輝きを放つエタニティリングが完成します。

ー ダイヤモンドのお話をしている時の余湖さん、すごく楽しそうですね。
20代後半にGIA鑑定士の資格を取りました。資格取得のために、日々何百個もの鉱物をルーペで観察するうちに、ダイヤモンドは地球が偶然に生み出した自然の産物と人間の技術が合体したものだと気がつき、ダイヤモンドの虜になりました。正直なところ、資格を取るまでは、「ダイヤモンド=ジュエリー」という単純な見方だったんです。
高圧のマグマで溶かされたミネラルが地表に押し上げられ、冷却されることで液体が結晶化し、宝石になる。そして人の手によって磨かれ、さらに美しく生まれ変わっていく。これってすごいことですよね。
「インターネットでジュエリーが売れるわけない」反対されたからこそ挑戦してみた
ー エタニティリング.comは最初から恵比寿に店舗を構えていたのでしょうか?
最初はお店を持たずにネット販売からスタートしました。ネット販売といっても、Webサイトで商品を購入できるわけではありません。Webサイトからご予約をいただき、直接お会いして、ダイヤモンドの美しさを感じていただいて、気に入っていただけたらお客様のサイズに合わせてお作りするという流れです。
15年も前の話なので、ネット社会の今とは時代が違っていたこともあり、父からは「インターネットでジュエリーが売れるわけない」と反対されていました。でも、面白いもので、反対されると、反骨精神みたいなものが首をもたげるんですよね。「成功して父を驚かせてやろう」と思い(笑)、商品の撮影をカメラマンさんにお願いして、自分でWebサイトを作成しました。そうしたら、Webサイトをオープンした1週間後にお客様からご連絡をいただけたんです。横浜のファストフード店でお会いして、オーダーをいただいたことを今でも鮮明に覚えています。
ー ネットでお店を立ち上げて、すぐにお問い合せが来るのはすごいですね。もともとSEIBIDOのことを知っていた方だったのですか?
いえ、最初はSEIBIDOという名前を一切出さずにスタートしました。私が父の後を継ぎ、現在は「エタニティリング.com SEIBIDO」としていますが、当初は「エタニティリング.com」という名前で運営していたんです。
エタニティリングというキーワードで見つけてもらえるように、わかりやすい名前にしました。そのため、最初のお客様はすべてWeb検索でお店を知ってくださった方々です。エタニティリングの需要があることを改めて実感できました。
ー その後、店舗を持ったのはどうしてでしょうか?
ありがたいことに、上は北海道から下は沖縄まで、全国各地からたくさんのご予約をいただくようになりました。最初はその都度ホテルのラウンジを予約してお客様とお会いしていたのですが、希望の時間にラウンジを予約できないほど予約が増えました。「そろそろ店舗が必要かな」と考えていたタイミングで、現在の恵比寿の物件に出会い、2016年に恵比寿店をオープンしました。今はご予約制でお店にご来店を頂いております。
ー 全国からお客様が来店されるのですね。
はい、現在も遠方から足を運んでくださるお客様が多くいらっしゃいます。ただ、コロナの時期には遠方からのご来店が難しくなってしまいました。
そこで、より多くの方にエタニティリング.comを知っていただくために、YouTubeチャンネルを始めました。今では、YouTubeを見てご来店くださるお客様も増えています。

ー 結婚10周年の方のためにお店を作ったというお話をされていましたが、お客様はやはりそういった方が多いのでしょうか?
結婚10周年のお客様や15周年、20周年、還暦祝いの方にも多くご来店いただいております。
また、結婚指輪としてエタニティリングを選ばれる方もとても多いです。最近は、婚約指輪を買わずに、結婚指輪を豪華にする方が増えているようです。
「着けっ放しにできるエタニティリング」を提供できることがやりがいに
ですが、ジュエリーに使われるゴールドやプラチナというのは、そもそもが柔らかい貴金属なので、着けっ放しにするとリングが変形する可能性があります。一方で、結婚指輪は着けっ放しが基本ですよね。
エタニティリングは全周がダイヤモンドのリングなので、「指輪が変形するとダイヤモンドが外れる可能性がある」ことをお伝えしながらのご提供に、当時はもどかしさを感じていました。
ー ダイヤモンドが落ちてしまう問題は解決できたのでしょうか?
鍛造(たんぞう)製法で加工した金属にダイヤモンドを付けられることがわかり、「毎日安心して使えるエタニティリング」をご提供できるようになりました。
ー 鍛造製法?
鍛造製法とは、金やプラチナを強く圧縮して硬くする加工方法です。鍛造製法で作った金属は普通の金属よりも5倍ほど硬く、着けっ放しにしても歪みません。
落ち込んでいる時や疲れている時でも、キラキラ輝くダイヤモンドを身につけると気分が上がりますよね。だからこそ、子育てや介護など、大変な時期を過ごしている方でも、気軽に身に着けられるエタニティリングを提供できることは、私のやりがいにつながっています。
ダイヤモンドは必需品。キラキラの輝きが心にパワーをくれる
ー 確かに、キラキラ輝くジュエリーを身につけている日は、テンションがあがります。
私は更年期を経験してから、ダイヤモンドが必需品になりました。
40代の半ばから更年期に悩まされていて、朝起きられない、食器がシンクに溜まっていても洗う気力が出ない、そんな日が続きました。でも、そんな時でもキラキラ輝くダイヤモンドを身につけると、血液が一気に循環されるような感覚で、弱っている自分にパワーが注がれたんです。
こんなお話をお客様にお伝えすると「わかる~!わかる~!」と共感していただけます。
更年期の辛い時期をダイヤモンドに救ってもらって、ダイヤモンドを身につける喜びを本当の意味でお客様と共有できるようになって、よりこの仕事が好きになりました。
ー ダイヤモンドは必需品!! ダイヤモンドは気軽に買えるものではないけれど、世代を超えて長く使えるのが魅力ですよね。
そうなんです。ダイヤモンドは何十億年も前に生まれた地球の恵。地球上でこれ以上硬い物質はないほど丈夫です。だからこそ、大切な人に引き継いで末長く使っていただけます。世の中には素敵なお洋服や鞄もたくさんあるけれど、私はお金をかけるのであれば、やっぱりジュエリーだと思っています。
お客様と一緒に石選び。価格を抑えて品質の高いダイヤモンドを提供

ー 大手ブランドと比べて、エタニティリング.comならではの強みはどんな点にあるとお考えですか?
エタニティリング.com SEIBIDOでは、ご予算をお伝えいただければ、お客様のご要望に合わせて最適な石選びを一緒にさせていただきます。たとえば、同じ予算の中でも、ダイヤモンドは少し小さめにすればグレードを上げることができ、逆にグレードを少し下げて大きめにすることもができるんです。
また、大手のブランドさんと比べると、かなり価格を抑えて品質の良いダイヤモンドを手に取っていただけると自負しています。
ー 差し支えなければ……。大手のブランドと比較すると、同じグレードのダイヤモンドの価格はどの程度異なるでしょうか。
過去に市場調査を行なった時には、同じグレードのダイヤモンドが大手ブランドさんだと2倍から4倍近い価格で販売されていました。
ーおぉ、結構な違いがあるのですね。
ブランドさんは、銀座の一等地に店舗があったり、雑誌に広告を出したりするので、その分商品の価格も上がってしまいますよね。
「ここのブランドの指輪がどうしても欲しい」という方は、もちろんブランドさんで購入されるのも良いかと思います。しかし、エタニティリングは洋服やバッグの様にブランドのデザインが反映されることは無いですし、ダイヤモンドは地球の産物です。ブランドが造っている訳ではありませんからね。
ジュエリーの事が何も判らない頃は、結婚指輪を大手のブランドさんで購入したけれど、結婚10周年は「同じ予算を出すのであれば、もっと大きいダイヤの指輪が欲しい」と、うちにご来店される方や、「ブランドを全部見たけれど、予算が合わないのでここに来ました」という方、また、当初からブランドにこだわらずに当店に来てくださる若い方も増えています。
ダイヤモンドの輝きで元気に過ごせる女性を増やしたい

―最後になりますが、余湖さんはエタニティリング.comをどのようなお店にしていきたいですか?
実は、「このお店を大きくしたい」というような野望は特に無くて、ただただ、誰かのお役に立ちたいという気持ちで日々過ごしています。
仕事や子育て、家事、介護……頑張りすぎている方や、周りの目を気にして「私がこんなゴージャスなジュエリーを身につけるべきではない」と思ってしまう女性が日本人には多い気がします。日本文化の奥ゆかしさは素晴らしいけれど、もっと自分を楽しませてあげることも大切だと思います。
ダイヤモンドのキラキラした輝きで、もっと日常が楽しめることを知って欲しいですね。
― ダイヤモンドでエネルギー充填。余湖さんご自身が、更年期の辛い時期にダイヤモンドの輝きに救われた経験があるからこその想いですね。
良い妻でいなきゃ、良い母でいなきゃ、良い人でいなきゃ……と、自分を高める努力も素晴らしいことですが、「今年はこんなに頑張ったから」と、ご自身をねぎらう気持ちも大切にしてほしいですね。
私の妹は米国にいるのですが、結婚の際に「出来るだけ大きなダイヤモンドが欲しい」と言ってきました。理由を聞くと、職場の女性たちがかなりゴージャスなジュエリーを身につけていて、「私は大きなダイヤモンドが似合うの」「このジュエリーは夫からプレゼントされたの」と笑顔に満ち溢れているそうなのです。これは、いかにもアメリカらしいと思いました。
ー 確かに、良いダイヤモンドを身につけた日は、自信が増すような気がします。
ジュエリーの美しい輝きは、心にエネルギーを与えてくれます。
ご年配の方で、「私はもう棺桶に片足突っ込んでるから、ダイヤモンドは必要ないわ」とおっしゃる方もいますが、私は「美しいものを身につけたいという気持ちは、生きるエネルギーになるんです」と伝えています。
日本でも、もっと多くの女性がダイヤモンドの輝きを身近に感じて、毎日を楽しく過ごせるようになってほしい。それが私の願いです。