「こんな可愛いものに囲まれて仕事ができたら最高だな」
20代の頃、バンド活動でイギリスに滞在していた女幸(こゆき)さんが思い描いたのは、雑貨屋を開くという夢でした。
帰国後は開業資金を貯めるために不動産投資を学び、1億円以上を借り入れて4年で8物件を取得。その後、念願だった雑貨屋「vinvin temitemi」をオープンしました。そして現在は、新会社を立ち上げ、シャンプー事業にも挑戦しています。
音楽、雑貨屋、不動産、シャンプー。一見すると、どれもつながりのない挑戦に見えるかもしれません。けれど女幸さんは、「すべて一本の軸でつながっている」と語ります。
好きなことを仕事にしながら、自分らしい挑戦を続けている女幸さん。その歩みと、今後成し遂げたい挑戦について伺いました。
加島 女幸(カシマ コユキ)
船橋市と鎌ヶ谷市の境、馬込沢で雑貨店「vinvin temitemi」を経営。20代は音楽制作やバンド活動を行い、イギリス・アイルランドでも活動。帰国後に不動産会社へ就職し、4年で8物件・借入総額1億円超の不動産投資を実現。現在は雑貨店を経営する傍ら、新会社「環美堂」を設立し、シャンプー事業の立ち上げを進めている。
イギリスで見つけた、雑貨屋という夢

──vinvin temitemi、素敵なお店ですね。ついついたくさんお買い物をしてしまいました!女幸さんは、どうして雑貨屋さんを始めたのですか?
セレクトしている時間が、我を忘れるくらい楽しいんです。お店に入ると「これが可愛い」「あれも欲しい」と瞬時に目につくし、仕入れでも「これは入れる」「これは違う」という判断が自然と出てくる。
20代の時にバンド活動でイギリスに暮らしていたのですが、現地のマーケットへ足を運ぶたびに、「こんな可愛いものに囲まれて仕事ができたら絶対楽しい」と思うようになりました。
バンド活動のために行ったはずなのに、滞在の後半は「日本に帰って雑貨屋をやるのが楽しみ」になっていたほどです。どんなお店にしようか、内装、椅子、トイレの雰囲気まで具体的に想像してノートに書き留めていました。
──もともとはバンドをされていたのですね!
20代は、シンガーソングライターとして活動する傍ら、企業向けの楽曲制作も幅広く手がけていました。パチンコ台の楽曲やTBSラジオのCMソング、ホテルのウェディングソングなどです。作曲から歌唱、コーラス、音源制作まで、一人で手がけていました。アカペラグループとして、小中学校の芸術鑑賞会で全国を回ったこともあります。
ただ、次第に「本当に自分がやりたい音楽をやりたい」という想いが強くなり、フレンチホルンを含む4人組のバンドを結成しました。日本では受け入れられにくい音楽スタイルだったため、活動拠点をアイルランドとイギリスへ移し、海外でライブ活動を続けていました。
充実した日々を送っていましたが、活動資金が底をついてしまい、一度日本へ帰国することになりました。

夢を叶えるために、借入1億円超の挑戦

──帰国して、雑貨屋さんをはじめたのですか?
帰国した当時は本当にお金がなかったので、まず資金を作ることから始めました。選んだのが、不動産会社で働くことです。
──どうして不動産だったのですか?
もともと間取り図や設計図を眺めるのが好きだったことと、正社員として一度働いてみたいと思ったからです。
働くうちに、不動産オーナーたちが自由に暮らしている姿が目に入ってきました。「私も不動産のオーナーになればいいんだ」と思って、必死に勉強しながら不動産投資を始めました。そうしたら「私、何がやりたかったんだっけ?」と思うくらい、気づけば不動産に没頭していました(笑)。
──不動産投資! 不動産を買うにはかなりのお金が必要そうですが……。
当時は今より融資が受けやすい時代でした。それでも当初の私は低所得の女性で、条件が良かったわけではありません。でも「どうすれば買えるか」を徹底的に調べて、行動した結果、1億円以上を借り入れて、4年で8物件を取得しました。
──「どうすれば買えるか」を徹底的に調べたとのことですが、どんな戦略があったのでしょう?
良い物件は常に取り合いです。不動産業者専用の物件情報ネットワークシステム「レインズ」に掲載された瞬間、数秒で問い合わせが入ります。だから、私のような一般人が同じ土俵で戦っても勝てません。そこで私は相続案件を多く扱う不動産会社に毎月足を運び関係を築いていきました。結果的に、レインズに載せる前の物件を紹介していただけるようになりました。
また、物件の取得や運用では、目先の利益だけでなく、「借りる人にとって魅力的か」「関わる人たちにとってメリットがあるか」という視点を大切にしてきました。小さな工夫を積み重ねることで、思うように進まなかった物件が動き出したこともあります。
商品を売るときも、お客様が「今何に困っているのか」「どうしたらもっと幸せになれるだろう」と考えることから始めます。相手にとって必要なものが見えれば、伝える言葉も、売り方も自然と決まってくる。不動産で培ったこの視点は、その後のあらゆる事業に活きています。
雑貨屋は儲からない?!「自分軸」を大切に複数の収入源を持つ
──不動産投資で資金を貯めて、ついに雑貨屋を開いたんですね。
そうです。購入した物件の1つを利用してvinvin temitemiをオープンしました。

ただ、雑貨屋というのは正直、利益が出にくいビジネスです。やるべき作業は多いのに単価は低く、唯一アルバイトを雇っている事業なのに、手元に残る利益は一番少ない。それでも続けているのは、やはり好きだからです。
好きなことを「好きだから」という理由だけで続けられる状態をつくることも大切です。そのために私が実践しているのが、収入の柱を複数持つという考え方です。100万円稼ぐなら、1つで100万円を狙うより、10万円稼げる柱を10本持つ方が安定する。そして伸びてきた柱に時間とお金を集中投下していく。この考え方は、これからの時代に特に有効だと思っています。
ただし、複数の事業を続けるにはブレない軸が必要です。軸がなければ、大変な局面で「なんでこれをやっているんだっけ」となってしまう。まず自分の軸を定めることが先です。
──女幸さんの軸とは?
心からワクワクしている状態を保つことです。それが私にとっての豊かさです。
次の挑戦は、本気のシャンプー事業
──複数の収入の柱を持つことが大切とのことですが、音楽、不動産投資、雑貨屋さん、他にも何かされていることがあるのでしょうか?
実は今、シャンプーを販売しようとしています。
──なぜシャンプー?!
きっかけは、偶然手に取った一冊の本でした。
大阪に行ったとき、たこ焼きを食べようと街を歩いていたら、本屋さんで新井亨さんの『日本人だけが知らないシン・華僑の教え』が、上から下まで一面に並んでいたんです。まるで「買いなさい」と言われているようで(笑)、思わず購入しました。
読んでみるとすごく面白くて、華僑の商売の考え方が自分に合っていると感じました。著者の新井さんに直接お会いしたくなり、セミナーに参加したところ、コンサルもされていると知って。そこで、人生で初めてコンサルを受けることにしたんです。
新井さんは、一つの事業をきっかけに、さまざまな事業へと挑戦されてきた方です。その姿に刺激を受け、「私も新しい事業を立ち上げていきたい」と思うようになりました。そして、その第一歩としてシャンプー開発に挑戦することを決めました。
シャンプー事業は、複業のひとつとして始めるのではなく、新たに会社を設立し、Webサイトも整えて、本格的な事業として展開していく予定です。
誰かの人生の入口になる場所を作りたい

──新しく作られた会社はシャンプーの製造販売がメインなのでしょうか?
シャンプー事業は全力で取り組んでいます。でも、最終的なゴールは、複合施設を作ることです。
イメージとしては、中心に広場と庭があって、その周囲に雑貨屋・アートスペース・地ビール工場・レストラン・パン屋・ライブハウスなどが並ぶ。週末にはマルシェやフェスを開いて、そこでアーティストたちが作品を展示したり、演奏したりできるのが理想です。
──どうして複合施設を作りたいのですか?
「雑誌に取り上げられるきっかけになった」「海外に飛び出す一歩になった」、そんな誰かの人生の入口になる場所を作りたいんです。
20代の頃は、自分が表現することへの欲求が強かったのですが、40歳を過ぎてからは誰かの才能を世の中に届けるお手伝いをしたいと思うようになりました。
今取り組んでいる事業はすべて、誰かの挑戦や才能を世の中につなぐための手段だと思っています。
何もしないことが一番の失敗
──お店にはさまざまな作家さんの作品が並んでいますよね。すでに、作家さんたちが活躍できる場所づくりを意識されているように感じました。そういった才能ある方々とはどのようにつながっているのですか?
作家さんとの出会いは、マルシェがきっかけになることが多いですね。仕事は直接会うことで生まれるものだと実感しています。ネットだけでは起きなかったことが、会うことで動き始めるんです。

実際、これまで携わってきたさまざまな仕事も、多くが人との出会いから生まれたものです。だからこそ、人と人がつながる場には積極的に足を運ぶようにしています。
開発中のシャンプーも同じです。成分や香りのヒントも、人と会うことで出会えることばかり。ネットでは出会えない情報は、人とのつながりの中にあります。
──人と会うことは普段から意識されているのですか?
はい、意識しています。できるだけZoomで済ませず、直接会うことを優先しています。
ビジネスで大切なのは、とにかく動くことです。準備が整ってから動こうとする人が多いですが、動きながら覚えていく方が圧倒的に早い。
一番の失敗は、何もしなかったことだと思うんです。人生の終わりに「もっとあれをやっておけばよかった」と後悔するのが一番もったいない。失敗を恐れず動く。それが成功への最短ルートだと信じています。
幸せから逆算すれば、やるべきことは見えてくる

──最後に、これから何かを始めたい方へメッセージをお願いします。
まず最初にすべきことは、自分にとっての「幸せ」を明確にすることだと思います。「自分はどうなりたいのか」「何が自分を満たすのか」を問いかける。それが定まれば、今やるべきことは逆算で見えてきます。
多くの人が「これをやっていいのだろうか」「こういうルールだから」と、自分で自分の可能性に蓋をしています。その蓋を外してほしいんです。好きなことは、心に余裕がある状態でやるから楽しい。その余裕を作るための一歩を、今すぐ踏み出してほしいと思います。


