京都駅前徒歩5分に店舗を構える足つぼ専門店「京のつぼby 足つぼマニアの研究室」。そのオーナーを務めるのが「NO 足つぼ・NO LIFE」だと言うたになかちよさん。
たになかさんのYouTubeやアメブロを拝見していると感じずにはいられない、足つぼへの愛。
たになかさんが足つぼサロンを立ち上げるまでの経緯とは?足つぼに人生を捧げて成し遂げたいこととは?話を伺いました。
幼少期に学んだ「マッサージをすると元気になる法則
ーー 拝読しているメルマガで「私ほど足つぼが好きな人はいないと思っています」と書かれていましたよね。そこまで好きなものがあること、それを仕事にしていること、素敵です!たになかさんはいつ頃足つぼに出会ったのですか?
初めて足つぼサロンに行ったのは、大学4年生の頃です。高校時代に比べて運動する機会が減って、筋肉の衰えから歩くスピードが遅くなったり、ヒールを履くようになって足が痛くなったり。足に不調を感じることが増えて、足つぼサロンに通いはじめました。
ーー マッサージではなく、足つぼだったのですね。
マッサージやリラクゼーションサロンにも行きましたよ。その時もオプションで足つぼを付けることが多かったです。
当時は海外旅行をする人が増え、台湾の足つぼが話題になっていた時期でした。足の裏を見れば体の不調がわかる。占い的な要素も強く注目されていたんですよね。
もちろん学生の時はお金がないので頻繁には通えませんでしたが、それでも半年に1回は行っていました。
ーー アメブロを読んでいたら、マッサージをよく取り入れるご家庭だったそうですね。そういったご両親の影響も足つぼ好きには関係しているのでしょうか?
父はちょっとした体調不良なら、薬に頼るよりもマッサージをして体の中の毒を出した方が良いという考えの人でした。
母も体調が優れない時はよくマッサージに通っていました。マッサージ前はぐったりしていた母が、マッサージを終えるとピンピンしているんです。
そういった両親の姿を見て育ったので、「マッサージをすると元気になる」という法則は幼い頃から頭に刻まれていました。
だからこそ、私自身も体調が優れない時は、部活で走りまくって汗をかいて治すみたいな生活を送っていました。
さらに、忘れもしないのが高校生時代に留学したイギリスでの体験です。
留学中に高熱が出た時に、知り合いのイギリス人から「熱が出た時は裸でシーツ1枚で寝なさい」と言われたんです。どうやら、イギリスでは体を冷やすことで病原菌を体から出すという考え方があるらしいのです。日本だと熱が出たら温かくして寝ますよね。日本とは真逆の考え方に驚きつつも、イギリス流の考え方はどこか父の教えと通ずるところがありました。
幼少期の家庭環境やイギリス留学の経験。そういったものが相まって、基本的に自然治癒力を信じて生きてきました。
原点は足つぼが好き
ーー 足つぼサロンを開く前は会社員をされていたのですよね。いつから足つぼサロンを開きたいと思っていたのでしょうか?
若い頃から起業を夢見ていました。実は社会人5年目の時に東京での独立を計画していたんです。しかし、そのタイミングで父が亡くなり、実家のある京都に戻ることになりました。当時は京都で起業することは難しいと思っていたので、一度は独立を諦め、京都のメーカーに再就職することにしたのです。
管理職になるつもりで就職したのですが、自分の未熟さから、組織の一員として働き続けることの難しさを感じるようになりました。たとえ出世できたとしても、自分のポテンシャルを活かすことはきっと難しい。興味のあることはとことん極めるタイプなので、好きなことで独立したいと思うようになりました。
ーー 独立を考えた時に足つぼ屋になる以外の選択肢もあったのでしょうか?
ファッション系にも興味はありました。しかし、自分の一番好きなことを改めて考えた時に、これまでの人生で1番お金を費やしていたのがリラクゼーションだったんです。
社会人になってからは週に1回、時には1日2〜3件、リラクゼーションサロンを渡り歩く日もありました。5年間でトータル500万円。給与のほとんどを足つぼやマッサージに使っていたと言っても過言ではありません。当時、勤務先が外苑前だったのですが、青山通りのリラクゼーションサロンはほとんど制覇しました。
リラクゼーションの中でも一番好きなのが足つぼ。足つぼさえやれば体の調子が整うことを体感していたからこそ、ビジネスをするなら足つぼだなと。
ーー 「好きなことにはとことん突き進むタイプ」だからこそ、一番好きな足つぼを仕事に選んだのですね。
幼い頃から父に「自分の能力を超えたことをやろうとすると絶対に辛くなる。どんなことでも良いから、自分の得意なことや好きなことを極めれば良い。その分野の頂点に立てば食いっぱぐれることはないから」と言われてきたんです。
時には周りから「好きなことを仕事にすると趣味がなくなり辛くなる」と言われたこともあります。しかし、私みたいな興味がないとやる気が出ないタイプの人間は、趣味や好きなことを仕事にする方が伸びると思っています。
若い頃は人の意見に左右され自分の意思がぶれてしまうこともありました。年を重ねるに連れて、自分の感覚に確信が持てるようになり、誰に何を言われても自分の決めた道を突き進めるようになりました。
ーー お父様の教えが、足つぼサロンを始める後押しをしてくれたのですね。
始まりは自宅ネイルサロン?!京都駅前にお店を構えるまで
ーー 足つぼを仕事にすると決めてから開業に至るまで、どのように行動したのでしょうか?
実は足つぼサロンをやる前にネイルの資格を取得して、自宅でネイルサロンをスタートしました。
ーー ネイル?!
当時はネイルの需要が高まっていたので、足つぼよりもネイルの方が集客しやすいし、単価を高く販売できると思ったんです。ネイルで集客して、オプションメニューで足つぼをしようと計画していました。
しかし、しばらくしてネイルがそんなに好きではないことに気がつきました。アートを描くことは好きなのですが、当時はシンプルなワンカラーのオーダーばかり。これなら私がやる必要はないよなと。
そこで、ネイルサロンを細々と続けながら足つぼの勉強をはじめ、アメブロを活用して集客をはじめました。
「痛い足つぼ、でもスッキリ『お仕置きコース』」と名付けてイベントの告知をしたこともあります。まずは片足だけ施術を受けて、痛みに耐えられないならお仕置きで片足は施術なし、だからお仕置きコースと。最初は全く反応がなくても、「どや?」「ほんま痛いで?」「ほれ?」とブログを更新していたら、徐々に申し込みが増えて満席になったんです。
ネイルの時は全然集客できなかったのに、足つぼだと自然と人が集まってくる。徐々に、ネイルは辞めて足つぼサロンに専念しようと思えるようになりました。
ーー 最初は自宅ネイルサロンからスタートし、今では京都の駅前に足つぼサロンを構えているなんてすごいですね!お店のホームページには足つぼをはじめてからの5年間で5000人以上の施術をしたと書いてありました。単純計算すると、365日休まずに毎日3人は施術している計算に!
最初はとにかく数をこなしたかったんです。自宅サロンでの施術の他に、いろいろなイベントに参加して短時間の施術を1日20人やった日もあります。
足つぼを学びはじめてから最初の2〜3年は、短時間の施術からのんびり時間をかけて行う施術、いろいろなパターンをこなすことで、自分にとってのベストなやり方を探っていきました。
その結果、私には少人数かつ長時間の施術が向いていることを体感しました。業界でも60分までのメニューは多いけれど、それ以上のメニューは単体ではあまりない。だからこそ、自分の得意であり、競合と被らない60分以上の施術をメインメニューにすることに決めました。
足つぼの施術をすることで感じたセルフケアの重要性
ーー 今では足つぼの施術の他、足つぼの技術を教えるスクール事業もされていますよね。
最初は人に教えることは嫌いだったんです。自分で揉むよりも、人に揉んでもらった方が絶対に気持ちが良い。だからこそ、足つぼを教えることには注力せずに、お願いされれば教えるというスタンスでした。
しかし、私が足つぼに拘れば拘るほど、1回の施術では対処できないようなとてつもない足を引っさげた人が、最後の駆け込み寺のような感じで来店されるようになりました。体調を本気で整えたいと思っているのであれば、お客様自身に変わってもらう必要があります。そこで本格的にセルフケアのための足つぼスクールをやってみることにしました。とはいえ、やるからには「ここにはこの反射区があるから3回押して〜」みたいな型にハマったことはやりたくない。2人として同じ足の人はいないからこそ、お客様それぞれにとって最適な指導をしようと決めました。
人に教えるためには、まずは自分の技術を言語化しなければいけない。そのためにYouTubeチャンネルを開設し『あなたの知らない足つぼの世界』の運営をスタートしました。
今では人に教えることにも楽しさややりがいを感じるようになり、セルフケア講座だけではなく、ご家族へのケア講座からセラピスト養成講座、京のつぼでセラピストになるための足つぼ二スト養成講座まで、様々な講座を行っています。
目指すのは足つぼ研究室員
ーー 足つぼサロン、スクール、YouTube、物販ビジネス。今後他にも挑戦したいことはあるのでしょうか?
実は、足つぼの施術からは少しずつ離れていこうと思っているんです。
昨年体調を崩して思うように動けない時期がありました。それを機に、このままひとりで足つぼの施術を続けていくのは体力的にも厳しいし、やりたいことに時間を割くためには何かを辞める必要があると感じたからです。
私の施術を希望されるリピーターさんの対応は今後も続けていきますが、新規のお客様は新しいスタッフさんにお願いしようと思っています。
ーー 足つぼの施術以外にもやりたいことがあるのですね。
足つぼの研究室員になりたいんです。
ーー お店の名前も『京のつぼ by 足つぼマニアの研究室』ですもんね。
足つぼってエビデンスが少ないんですよね。
たとえば、「足つぼをして病気が治りました」というような1人1人の体験はあっても、それを科学的に統計したデータがない。
足つぼの効果を証明するものはないけれど、私は全人類足つぼをやったら良いと思うほど、足つぼは体を整える上で役に立つ療法だと確信しています。だからこそ、足つぼのすごさを証明できるようにデータを集めたい。誰もやらないのであれば私がやるしかないなと。
ーー 足つぼのデータはどのように計測していくのでしょうか?
今考えているのは、たとえば逆流性食道炎とか肥満など同じ症状を抱えている人を20〜30人集めて、何割の人に足つぼの効果があるのかをデータ化していくといった感じです。
足つぼの研究は本当にやりたいことなので、時間も労力も惜しまないです。
ーー 足つぼのエビデンスを集めた先に描く未来とは?
足つぼを日常に取り入れる人がもっと増えたら良いですし、エビデンスを残すことは未来の足つぼセラピストさんのためにもなると思っています。
たまに「足つぼは意味がない説」といった話を耳にすることがあって。そういうことを言われてしまうと、未来のセラピストさんもいなくなってしまいますよね。
私みたいに足つぼに人生を捧げている人がいて、信頼できるエビデンスがあれば、安心して足つぼセラピストになってもらえるかなと。
ーー 新規の方の施術はスタッフさんにお願いしていくとのことですが、今後は規模の拡大も考えているのでしょうか?
店舗を増やすことは今は考えていませんが、しっかりお店を回して売り上げは伸ばしたいです。スタッフもあと2人位増やしたいですね。
そのためにも、今はマニュアル作りに励んでいます。
というのも、セラピストによって施術の個人差が出ないように基礎技術を身につけることが重要だと思っているからです。「ふくらはぎの揉みがうまい」とか「強揉みが得意」とか、人によって得意分野は異なります。それぞれの強みは売り出し方や見せ方でいくらでも活かせるので、まずは基礎技術の習得が大事。
スタッフ全員が基礎技術を身につけて、その上でそれぞれの得意をアピールできれば、足つぼ屋としては絶対に成功できる。これまでたくさんのリラクゼーションサロンに通ってきたからこそ、そこには絶対的な自信を持っています。